<   2008年 06月 ( 1 )   > この月の画像一覧

 

翻訳新訳誤訳に妙訳

全然読んだこともない者がこんなん言うんも門外漢そのものですが。

言葉に関わってる一人としては気になるニュースでした。


スタンダールの「赤と黒」の新訳をめぐって対立が起こっています。
「誤訳博覧会」というスタンダール専門家に対し、「些細な論争」と返す編集者。

なるほど。専門家は、慣用句にもなっている単語を別の意味に訳しているなどずさんな訳を指摘していて、編集者は、読者の大半からは文章に好評であるし、文句があるなら自分で訳してはどうですかという意見だそうです。

気にかかったんは、編集者の反対意見です。「読者の大半は好意的」は専門家に対する反対理由になっていない気がするんです。この新訳は、名著クラシック作品を新しく訳して、今まで知らない読者層を開拓しようというもとでシリーズ化されたもののひとつなんですが、これを読んでいる人のなかで、今までの訳を読んだことがある人が大半なんでしょうか。もっと意地悪く言えば、その中で原文を読んだことがある人はどれくらいでしょうか。

「好意的」なのは、読者層で始めて読んだ人が「読みやすかった」からであって、訳が正確で、作者独自の世界を垣間見れたということではないと思うんです。そして、それだから些細なことと片付けてしまうのは惜しいわけですわなあ。

翻訳は難しいことやと思います。ドイツで通訳かぶれのお手伝いもしたことがありますが、どうしても「わかりやすい日本語」で表せないこともあるんです。言葉は文化を反映しています。だから、やたら読みやすくて日本人に共感できるものを追い求めると、その作者の世界・作者の言葉の文化・価値観がうすくなっていく気がするんです。

専門家が言うように絶版しろとは言いませんけど、編集者はもうちょっと聞く耳を持ってもいいんちゃうかなと思います。だって、本は改訂できるんですもの。

ひとつの言葉を別の言葉に訳すと、訳者の自身の世界観も当然入り込んでくるわけです。そこが、難しいところですね。何を、「いい訳」と言うか。


でもやっぱり、言葉に「些細な」問題なんてないと思いますね。
[PR]

by walkie-talkie | 2008-06-08 20:28 | see / sehen